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経営・管理実務

外国人起業準備活動の「特定活動」は死刑宣告?――経営・管理新基準でスタートアップビザの出口が消えかけている

外国人が日本で起業するための制度として知られる、いわゆる「スタートアップビザ」。正式には、外国人起業活動促進事業に基づく在留資格「特定活動」です。制度そのものは現在も存在し、2025年1月から制度が一本化され、起業準備活動期間は最長2年間まで認められるようになりました。

一見すると、外国人起業家にとって以前より使いやすくなったようにも見えます。しかし、実務の現場から見ると、まったく逆の問題が起きています。それが、「2年間準備した後、どの在留資格に変更するのか」という問題です。

結論

2025年10月以降の「経営・管理」新基準を前提にすると、従来型のスタートアップビザは出口を大幅に狭められました。制度自体は生きています。しかし、出口が極端に重くなった。実務的には「死刑宣告に近い」と感じる場面もあります。

そもそもスタートアップビザとは何か

スタートアップビザは、外国人が日本で起業準備を行うための制度です。通常、「経営・管理」を取得するためには、申請時点ですでに一定の事業基盤を整えている必要があります。

しかし、外国人が海外から、日本国内の事務所契約、法人設立、銀行口座開設、従業員採用、許認可取得などを完了させるのは簡単ではありません。そこで、まず日本に入国し、一定期間起業準備を行えるようにしたのがスタートアップビザです。

誰でも直接、入管に申請できるわけではない

スタートアップビザは、事業計画書を書いてそのまま入管に「特定活動」を申請する制度ではありません。

まず、経済産業大臣の認定を受けた地方公共団体または一定の民間支援事業者に起業準備活動計画を提出し、事業計画等の確認を受け、「起業準備活動計画確認証明書」を取得します。その証明書を添えて、地方出入国在留管理局に「特定活動」を申請します。

制度の構造

自治体等による一次確認 + 入管による在留審査、という二段階構造です。一般に「地方自治体の推薦」と説明されることもありますが、より正確には、認定実施団体による起業準備活動計画の確認と確認証明書の交付です。

以前のスタートアップビザには分かりやすい出口があった

従来の制度設計は比較的分かりやすいものでした。

STEP 1 スタートアップビザで日本に入国
↓
STEP 2 日本国内で起業準備
↓
STEP 3 会社設立
↓
STEP 4 事務所確保
↓
STEP 5 一定規模の事業基盤を作る
↓
STEP 6 「経営・管理」に変更

つまり、スタートアップビザは「経営・管理」を取得するまでの助走期間という位置付けでした。

ところが「経営・管理」の出口条件が変わった

問題はここです。2025年10月以降、「経営・管理」の基準が大きく変わりました。従来型の「小規模な資本金で会社を設立し、代表者本人中心で事業を始める」というモデルでは、簡単に出口へ到達できなくなりました。

入口であるスタートアップビザは残った。一方で、出口である経営・管理が一気に重くなった。という構造です。

2年間準備できても、最後に経営・管理へ変更できなければ意味がない

スタートアップビザの最大のメリットは、日本国内で起業準備を行えることです。しかし、起業準備そのものが最終目的ではありません。最終的には、日本で会社を経営し続けることが目的であり、そのためには原則として「経営・管理」へ変更する必要があります。

ところが、変更要件が厳格化すれば、2年間かけて会社を作り、事務所を借り、顧客を開拓し、売上を発生させても、最後に「経営・管理の要件を満たしていません」となる可能性があります。

最大の矛盾――スタートアップなのに最初から完成企業を求めるのか

本来、スタートアップとは、小さく始め、市場を検証し、売上を作り、投資を受け、人を増やし、成長していくものです。

しかし、「経営・管理」の出口条件が重くなれば、外国人起業家は起業初期から、相当額の資本、常勤雇用、独立した事業所、継続的な事業基盤などを要求されることになります。

「まだスタートアップなのに、最初から完成した企業であることを求められる」という矛盾が生じます。

では自治体の審査を通れば安心なのか

ここも誤解されやすいところです。スタートアップビザでは自治体等が事業計画を確認します。しかし、自治体等が確認したからといって、その後の「経営・管理」が保証されるわけではありません。

自治体等が確認するのは「この起業準備計画を支援対象として認めるか」という部分です。一方、最終的に「経営・管理」の在留資格を許可するのは出入国在留管理局です。審査主体が異なります。

したがって、スタートアップビザが許可され、2年間起業準備し、自治体の支援も受けたにもかかわらず、それでも「経営・管理」は不許可、ということは制度上あり得ます。

「自治体の推薦」が将来もっと重要になる可能性

ここからは実務上の推測です。現在のスタートアップビザは、自治体等による事前確認を前提とする制度です。

一方、「経営・管理」についても今後、「誰でも自由に会社を作れば入管へ申請できる」というモデルから、一定の第三者機関・地方自治体等が事業計画を確認し、その上で入管が審査する方向へ制度設計が変化する可能性は考えられます。

そうなれば、スタートアップビザは死ぬどころか、逆に将来の「経営・管理」の入口モデルになる可能性もあります。

だから「死刑宣告」はまだ確定ではない

現時点で「スタートアップビザ制度が廃止された」という事実はありません。むしろ、2025年には制度統合・延長が行われています。

したがって、法律上「死刑宣告された制度」と断定するのは正確ではありません。ただし実務上は、出口である「経営・管理」が重くなりすぎて、従来型スタートアップビザの利用価値が大きく低下しているという指摘は十分成り立ちます。

今後は「スタートアップビザを取れるか」ではなく「2年後どうするか」

今後、この制度を利用する外国人に対して最も重要なのは、「スタートアップビザが取れます」と説明することではありません。申請前に、「2年後、経営・管理へ変更できる事業になるか」を検討することです。

つまり、入口審査ではなく、出口審査から逆算して事業計画を作る必要があります。

実務上、最初に確認すべきこと

  • 最終的な必要資本金を準備できるか
  • 常勤雇用を実現できるか
  • 2年間で十分な売上を作れるか
  • 独立した事業所を維持できるか
  • 起業分野が自治体等の支援対象になっているか
  • 事業計画に現実性があるか
  • 2年後の「経営・管理」変更まで資金が持つか

当法人の実務感覚

これまでのスタートアップビザは、「経営・管理を取るための準備期間」という比較的分かりやすい制度でした。しかし、新基準以降は「準備期間が2年間あるから大丈夫」という考え方は危険です。

むしろ、2年後に重い「経営・管理」基準を突破できる人だけが使う制度になりつつあります。入口は残っている。しかし出口が細くなった。これが現在のスタートアップビザを理解する上で最も重要なポイントです。

まとめ

スタートアップビザ自体は現在も存在します。そして原則として、経済産業大臣の認定を受けた地方公共団体または民間事業者による起業準備活動計画の確認が必要です。

「地方政府の推薦が必要か」という質問に対しては、従来の言い方では概ねYES。ただし、現在は地方自治体だけでなく認定民間事業者も対象であり、正確には「認定実施団体から確認証明書を取得する必要がある」というのが正確です。

そして本当の問題はその先です。スタートアップビザは取れても、2年後に「経営・管理」へ変更できるのか。

制度が死んだのではありません。しかし、従来の使い方はかなり厳しくなった。これが現在の実務感覚です。

※本稿は2026年10月時点の制度と、当法人の実務上の考察に基づくものです。スタートアップビザの対象事業、確認手続、支援条件等は実施団体ごとに異なります。また、将来の制度設計に関する部分は実務上の推測を含みます。