最近、「技術・人文知識・国際業務」をはじめとする就労系在留資格の申請で、申請人本人の学歴・職歴・仕事内容だけではなく、雇用先企業全体の勤務実態に関する追加資料を細かく求められるケースが見られます。全従業員の賃金台帳や出勤簿、休暇簿、事務所の賃料・光熱費、さらには代表者を含む全従業員の勤務写真まで要求される例があります。
① 全従業員名簿
② 直近6か月分の賃金台帳(全従業員分)
③ 直近6か月分の出勤簿・タイムカード(全従業員分)
④ 直近6か月分の休暇取得状況(全従業員分)
⑤ 事務所の直近6か月分の賃料支払資料
⑥ 事務所の直近6か月分の光熱費の請求・支払資料
⑦ 代表者を含む全従業員が実際に勤務している状況の写真
「申請人が技人国に該当するか」だけではない
従来、「技術・人文知識・国際業務」の申請では、学歴・専攻、職歴、雇用契約、報酬額、そして従事予定の仕事内容が中心的な確認事項でした。
しかし、会社全体の従業員資料や事務所資料まで求められるケースを見ると、審査の視点はそれだけではありません。
「その会社に本当にその専門業務が存在するのか」「申請人が実際にその専門業務を担当する体制になっているのか」まで確認しようとしていると考えると、追加資料の意味が見えてきます。
なぜ「全従業員」の資料まで求めるのか
申請人1名の雇用契約書だけを見ても、会社全体の分業は分かりません。
例えば、申請人を「海外営業・貿易担当」として採用する場合、入管側から見れば、他の従業員が何を担当しているのか、現場作業や店舗業務を担当する社員が別にいるのか、申請人だけ仕事内容が不自然に専門職として切り出されていないか、という点が問題になります。
そこで、全従業員の氏名、年齢、採用年月日、役職、連絡先、外国人の場合は在留資格・在留カード番号まで確認することで、会社全体の人員構成と業務分担を見ることができます。
技人国では「誰が何をしているのか」が重要
特に、小売、飲食、ホテル、人材、不動産、貿易など、専門業務と現場業務が併存しやすい業種では注意が必要です。
会社内に、接客、レジ、商品陳列、清掃、倉庫作業、梱包などの業務が存在すること自体は問題ではありません。問題になるのは、申請人本人が実際には何を担当するのかです。
例えば申請書では「市場調査・海外営業」と説明していても、会社全体の人員配置を見ると、その申請人が店舗現場を担当しなければ業務が回らないような構成であれば、説明の合理性が問われる可能性があります。
賃金台帳・出勤簿・休暇簿はセットで見る
今回のような追加資料では、賃金台帳、出勤簿・タイムカード、休暇簿をすべて直近6か月分、しかも全従業員分求める例があります。
ここで重要なのは、単に各資料が存在することではなく、資料同士が整合していることです。
例えば、賃金台帳上は月22日勤務なのに出勤簿では10日しか出勤していない、休暇簿にも欠勤や休暇の記録がない、という状態であれば説明が必要になります。
逆に、出勤、休暇、給与支給が自然につながっていれば、雇用先が日常的に勤怠・給与管理をしていることを説明しやすくなります。
「休暇を取っていない場合も提出」の意味
追加資料通知では、休暇を取得していない場合でも、取得していないことが分かる資料を提出するよう求められることがあります。
これは、休暇取得日数そのものよりも、会社が従業員の勤怠を継続して管理しているかを確認していると考えると理解しやすいでしょう。
「休暇がなかったから資料がない」ではなく、0日を含めて管理記録が残っている方が、会社の労務管理状況を説明しやすくなります。
なぜ就労ビザで事務所の家賃を見るのか
就労ビザの申請なのに、事務所の賃料支払資料まで求められると、違和感を持つ方もいるかもしれません。
しかし、これは雇用先企業の実態確認という視点から考えると分かりやすい資料です。
賃貸借契約書だけでなく、直近6か月にわたって実際に家賃を払い続けていることが確認できれば、会社の活動拠点が現在も継続して存在していることの一つの裏付けになります。
光熱費は「事務所が本当に使われているか」を見る資料
さらに、直近6か月分の電気・水道等の請求額と支払記録まで求められることがあります。
例えば「多数の従業員が毎日この事務所で勤務している」と説明している一方で、長期間ほとんど電気使用量がないのであれば、審査上疑問を持たれる可能性があります。
もちろん、賃料に光熱費が含まれている、管理会社が一括請求している、シェアオフィスであるなど個別事情はあります。その場合は、存在しない資料を作るのではなく、なぜ個別請求がないのかを客観資料とともに説明することが重要です。
「全従業員の勤務写真」はかなり直接的な実態確認
今回特に注目したいのが、代表者を含む全従業員が実際に勤務している状況の写真です。
単なる事務所の外観や机・パソコンの写真ではなく、人がそこで実際に働いている状況を求めています。
実務上は、事務所全景、入口・社名表示、代表者の勤務状況、従業員それぞれの勤務状況、打合せ風景、PCを使用した業務状況などを、会社の実際の業務内容に合わせて整理すると分かりやすくなります。
ただし、写真撮影の日だけ全員を集めて「それらしい写真」を作ればよいという話ではありません。写真は出勤簿、給与、役職、業務内容、組織図など、他の資料と一致している必要があります。
7種類の資料は一本につながっている
| 資料 | 主に確認されると考えられる点 |
|---|---|
| 全従業員名簿 | 誰が在籍し、どの役職・在留資格で働いているか |
| 賃金台帳 | 実際に継続して給与を支払っているか |
| 出勤簿・タイムカード | 日常的な勤務実態があるか |
| 休暇簿 | 勤怠管理が継続して行われているか |
| 事務所賃料 | 活動拠点が継続して存在するか |
| 光熱費 | 事務所に実際の使用実態があるか |
| 勤務写真 | 従業員が実際にその場所で勤務しているか |
最終的には、「この会社にはこの人数の従業員がいて、この場所でこのように分業し、その中で申請人がこの専門業務を担当する」という一つのストーリーとして整合している必要があります。
技人国申請で見るべきポイントが一段増えた
技術・人文知識・国際業務では、従来から「申請人の学歴・職歴」と「仕事内容」の関係が重要です。
しかし、最近の追加資料の傾向を見ると、さらに、会社全体の業務分担、雇用・勤務実態、事務所の使用実態まで確認されるケースがあります。
つまり、「この人ならこの仕事ができる」だけでなく、「この会社には本当にその仕事があり、この人をその仕事に配置する合理性がある」ことまで説明できることが重要です。
特に事前準備を厚くしたい会社
- 設立して間もない会社
- 短期間に従業員数が大きく増えた会社
- 外国人従業員が多い会社
- 小売・飲食・ホテルなど現場業務を伴う会社
- 専門業務と単純・現場業務が混在する会社
- 申請人の専門業務と会社の主たる事業との関係が分かりにくい会社
- 小規模な事務所に多数の従業員が在籍している会社
- 在宅勤務・外勤が多い会社
これらに該当するだけで不許可になるわけではありません。ただし、「誰が、どこで、何をしている会社なのか」をより具体的に説明できるよう準備する必要があります。
追加資料が来てから6か月分を作るのは難しい
今回求められている資料の多くは「直近6か月分」です。
追加資料通知を受け取ってから、6か月前の出勤・休暇・給与管理を一から正確に再現することは困難です。外国人雇用を予定する企業では、平常時から従業員名簿、出勤簿、賃金台帳、休暇簿、給与振込記録、雇用契約書、事務所関連支払資料を整理しておく必要があります。
申請のために「見栄えのよい資料」を後から作るのではなく、日常の会社運営そのものを記録しておくことが最も重要です。
当法人の実務感覚
今回のような追加資料を見ると、技人国の審査は単なる「申請人の履歴書を見る審査」ではなく、雇用先企業の中に申請人を置いてみて、その雇用が本当に自然かを見る審査になっていると感じます。
申請人が海外営業担当なら、他の社員は何をしているのか。ITエンジニアなら、本当にIT事業と開発環境があるのか。経理担当なら、会社規模・取引量から見てその業務量が実際に存在するのか。
追加資料通知を受けたときは、「なぜ申請人以外の社員の資料まで必要なのか」と個別の要求だけを見るのではなく、入管が最終的に何を確認したいのかを読むことが重要です。
まとめ――「雇用理由書の文章」だけでは足りない
技術・人文知識・国際業務などの就労ビザでは、学歴と仕事内容の一致だけで審査が終わるとは限りません。
最近の追加資料から見えるのは、人、勤務、給与、場所、分業、そして申請人の専門業務を会社全体として確認する視点です。
雇用理由書の文章だけを立派にするのではなく、その文章の後ろに、会社の実際の組織、従業員、勤怠、給与、事務所、仕事が存在していること。
それを客観的な資料で一貫して説明できることが、今後ますます重要になると考えています。
※本稿は、当法人が取り扱う申請実務において確認した追加資料の傾向を踏まえた実務上の考察です。上記資料が「技術・人文知識・国際業務」等のすべての申請で一律に必要となるものではありません。個々の申請内容、所属機関、審査上の確認事項等により追加資料は異なります。
