2025年10月16日に施行された在留資格「経営・管理」の新基準では、日本語能力に関する要件が設けられました。実務で混乱しやすいのは、「常勤職員の雇用要件」と「日本語能力要件」で対象となる人の範囲が同じではない点です。本稿では、典型的な7パターンに分けて整理します。
まず「雇用要件」と「日本語能力要件」を分けて考える
新基準では、一定の身分を有する常勤職員を1名以上雇用することが求められます。雇用要件上カウントできるのは、日本人、特別永住者又は法別表第二の在留資格を有する外国人です。具体的には、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などが該当します。
一方、日本語能力要件は、申請人本人又は常勤職員のいずれかがB2相当以上の日本語能力を有していることがポイントです。日本語能力要件との関係では、法別表第一の在留資格を持つ外国人常勤職員が対象となり得ます。
「雇用要件を満たす人」と「日本語能力要件を満たす人」は、必ずしも同一人物である必要はありません。 ここを切り分けると、判定がかなり分かりやすくなります。
日本語能力は何で立証するのか
日本人又は特別永住者以外については、原則として、JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、中長期在留者として日本に20年以上在留、日本の大学等の高等教育機関を卒業、日本の義務教育を修了し高等学校を卒業した場合など、制度上示された方法によって確認します。
以下では便宜上、こうした立証ができる状態を「日本語能力○」と表記します。
経営・管理新基準の日本語能力判定7パターン
| パターン | 経営者本人の日本語能力 | 日本人・特別永住者の常勤職員 | 別表第二の常勤職員 | 日本語能力を立証できる外国人常勤職員 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | × | なし | ○ | × | 不適合 |
| ② | ○ | なし | なし | ― | 不適合 |
| ③ | × | ○ | ― | ― | 適合 |
| ④ | × | なし | ○ | ○ | 適合 |
| ⑤ | ○ | ○ | ― | ― | 適合 |
| ⑥ | ○ | なし | ○ | × | 適合 |
| ⑦ | ○ | なし | ○ | ○ | 適合 |
※上表は実務上分かりやすいように典型例を7パターンに整理したものです。すべての人員構成を網羅するものではありません。
パターン① 本人×+別表第二の常勤職員○+日本語能力者×
判定:不適合。 例えば、経営者本人に日本語能力の立証がなく、定住者の常勤職員を1名雇用しているものの、その職員にも日本語能力を立証できる資料がない場合です。定住者によって雇用要件は満たしますが、日本語能力要件を満たす人がいません。
永住者や定住者を雇用しているからといって、自動的に日本語能力要件まで満たすわけではありません。
パターン② 本人○+対象となる常勤職員なし
判定:不適合。 経営者本人がJLPT N1やN2を持っていても、それだけで常勤職員の雇用義務がなくなるわけではありません。日本語能力要件は満たしていても、雇用要件を満たす常勤職員がいなければ全体として不足します。
パターン③ 本人×+日本人常勤職員○
判定:適合。 日本人の常勤職員が1名いれば、その人によって雇用要件と日本語能力要件の双方を満たすことができます。経営者本人にJLPT N2等がなくても、日本語能力要件との関係では問題になりません。
パターン④ 本人×+別表第二の常勤職員○+日本語能力を有する外国人常勤職員○
判定:適合。 例えば、定住者の常勤職員Aが雇用要件を満たし、技術・人文知識・国際業務で在留する常勤職員BがJLPT N2を有して日本語能力要件を満たす、という組合せです。
技人国の外国人常勤職員Bは、雇用要件上の「1名」としてはカウントできなくても、日本語能力要件を担うことはできます。二つの要件を別々の人が満たす典型例です。
パターン⑤ 本人○+日本人常勤職員○
判定:適合。 経営者本人が日本語能力要件を満たし、日本人常勤職員によって雇用要件も満たします。日本人常勤職員だけでも双方の要件を満たし得るため、日本語能力については重複して満たしている状態です。
パターン⑥ 本人○+別表第二の常勤職員○+当該職員の日本語能力立証なし
判定:適合。 例えば、経営者本人がJLPT N2以上で、常勤職員として永住者を1名雇用している場合です。永住者が雇用要件を満たし、経営者本人が日本語能力要件を満たします。
つまり、雇用要件を担当する常勤職員本人が、日本語能力要件まで満たしている必要はありません。
パターン⑦ 本人○+別表第二の常勤職員○+日本語能力を有する外国人常勤職員○
判定:適合。 経営者本人が日本語能力要件を満たし、別表第二の常勤職員によって雇用要件も満たしています。さらに日本語能力を有する外国人常勤職員がいても問題ありません。
実務では「誰がどの要件を担当するのか」を見る
この制度を「誰が日本語を話せるか」だけで考えると混乱しやすくなります。実務では、次の二段階に分けて確認する方が分かりやすいです。
- 雇用要件を満たす常勤職員がいるか。
- 経営者本人又は常勤職員の中に、日本語能力要件を満たす人がいるか。
定住者の常勤職員 → 雇用要件○・日本語能力は別途確認
技人国+N2の常勤職員 → 雇用要件×・日本語能力要件○
日本人常勤職員 → 雇用要件○・日本語能力要件○
経営者本人+N2 → 日本語能力要件○・雇用要件は別途必要
「技人国N1の社員がいるから大丈夫」は半分だけ正しい
例えば、外国人経営者本人は日本語能力を立証できないものの、技人国で働く外国人社員がJLPT N1を持っているケースを考えます。この社員によって日本語能力要件は満たし得ます。
しかし、日本人、特別永住者又は別表第二の在留資格を持つ常勤職員が誰もいなければ、雇用要件が不足します。逆に、永住者を1名雇用していても、経営者にもその永住者にも他の常勤職員にも日本語能力の立証がなければ、日本語能力要件が残ります。
「日本語が話せる」と「日本語能力要件を立証できる」は違う
実務では「日本語できますか」と聞くだけでは足りません。確認すべきなのは、「新基準上、日本語能力を何によって立証できるか」です。
会話が流暢であっても、制度上求められる確認資料との関係は別問題です。JLPT、BJT、日本での在留歴、国内の教育歴など、どの方法で立証するのかを最初に整理しておく必要があります。
7パターンは典型例であり、すべてではない
今回の7パターンは、実務上分かりやすい典型例です。例えば、定住者の常勤職員自身がJLPT N2等を有している場合、その1名で雇用要件と日本語能力要件の双方を満たし得ます。
人数の組合せを暗記するより、「雇用要件」と「日本語能力要件」を別々に判定することが重要です。
参考資料
※記事は2026年9月24日時点の公表資料に基づき、実務上理解しやすいように整理したものです。個別案件では、常勤性、雇用形態、在留資格、日本語能力の立証資料その他の事情を個別に確認する必要があります。
