入管業務で、経験はものをいうのか。私は、かなりものをいうと思っています。ただし、ここでいう「経験」とは、単純に行政書士として何年仕事をしているか、という意味ではありません。むしろ重要なのは、今も継続して入管業務をやっているかどうかです。
入管業務の難しいところは、法律だけ勉強していれば追いつける世界ではないことです。
法律が変わる。省令や告示も変わる。審査要領や提出資料の考え方も変わる。さらに、実際の窓口・審査現場での運用も変わる。
しかも、この「運用」の変化が非常に速い。
昨日まで特に問題にならなかった資料が、今日は追加提出を求められる。
以前は説明書だけで通っていたものについて、最近では裏付け資料まで要求される。
同じ在留資格、似たような案件でも、申請する時期、地方入管によって、確認されるポイントが少し違うこともあります。
いわゆる「ローカルルール」のようなものまで存在します。
法律より先に、実務が動くこともある
入管実務をやっていると、
「法律のどこに書いてありますか」
と聞かれることがあります。
もちろん、行政手続である以上、法律、政省令、告示、ガイドライン等の根拠を確認することは重要です。
しかし、実務ではそれだけでは足りません。
法律上は提出必須と書かれていない資料でも、審査の過程で追加提出を求められることがあります。
逆に、形式上は必要に見える資料でも、案件の内容によっては別資料で説明できる場合があります。
このあたりは、条文を読んだだけではなかなか分かりません。
実際に申請を出し、追加資料を受け、審査官から照会を受け、その結果がどうなったのか。
その積み重ねによって、少しずつ見えてきます。
「昔たくさんやった」だけでは足りない
入管業務については、
「以前、何百件もやっていました」
という経験だけでは、十分とはいえないことがあります。
極端にいえば、数年間入管業務から離れてしまえば、昔の常識がそのまま使えないこともあります。
制度改正がある。必要書類が変わる。審査の重点が変わる。入管が警戒している業種や申請パターンも変わる。そして何より、実務運用が変わります。
そのため、入管業務は、やり続けていないと感覚が急速に古くなる仕事だと思っています。
少し言い過ぎかもしれませんが、数年間現場から離れてしまえば、再び始めるときにはかなり勉強し直さなければならない。
場合によっては、感覚としては「ほぼ新人からやり直し」に近い部分さえあります。
件数をこなせばいい、という話でもない
では、申請件数が多ければ、それだけで経験豊富なのか。
これも少し違います。
重要なのは、単純な件数より、どんな案件を経験したか。どんな追加資料を求められたか。何を疑われたのか。どんな説明が通り、どんな説明が通らなかったのか。そして、不許可案件から何を学んだか。だと思っています。
順調な案件だけを100件経験するより、難しい案件、追加資料案件、変更案件、不許可後の再申請などを経験したほうが、実務感覚が鍛えられることもあります。
入管から追加資料通知が来たとき、
「何を出せと言われているか」だけを見るのではなく、
「入管は何を疑っているのか」まで考えられるかどうか。
これは、教科書だけでは身につきにくい部分です。
入管業務は「知識」より「更新」が重要
入管業務では、知識量ももちろん重要です。
しかし、それ以上に大切なのは、常に知識を更新することだと思います。
去年正しかった知識が、今年も正しいとは限らない。半年前の実務感覚が、現在もそのままとは限らない。
だからこそ私たちも、「以前はこうだった」という経験を、そのまま現在の案件に当てはめないようにしています。
過去の経験は大切です。しかし、過去の経験に固執すると、逆に危険です。
経験とは、昔の成功例を覚えていることではなく、変化に気づけることなのかもしれません。
結局、入管業務は「現役」が強い
入管業務について、「経験はものをいうのか」と聞かれれば、私は「はい」と答えます。
ただし、行政書士歴20年だから強い。入管業務歴10年だから強い。という単純な話ではありません。
大切なのは、現在進行形で、どれだけ入管実務に触れているか。
毎日の申請。毎日の相談。追加資料。審査官からの照会。許可。不許可。制度変更。現場運用の変化。
それらを継続して追い続けること。
入管業務は、一度覚えれば終わりの仕事ではありません。むしろ、少し離れるだけでも、すぐに浦島太郎になりかねない世界です。
だからこそ、入管業務における本当の「経験」とは、
経験年数ではなく、変化し続ける実務の中に居続けた時間なのではないか。
最近は、そんなふうに感じています。
